医師という生き物

病院で働いているといろいろ大変なことはあるのだが、

私にとってその上位にあるのは人間関係である。

特に、医者との人間関係。

患者さんや、他職種との人間関係にとても困らされたことはそこまでないが、

(医者に対してものすごく攻撃的な対応をしてくるのは通常余程のことがあった時)

医者は厄介な人が多い。

傲慢で、排他的で、陰湿で、その上無責任で

自分が世界の中心だと思っている人が少なくない。

 

医学部医学科の学生は基本的に全員医者になる。

初期臨床研修が必修化されて以降、卒業後に一度も医者として働いた事のない

医学部卒業生は稀なはずだ。

医学部に入学して、はじめの数ヶ月、

一緒にいる人が固定化するまでの間、

なんだか嫌な人が多いなあと思ったのを今でも覚えている。

こんな人たちと六年もやっていけるだろうかと。

地元の高校での成績が良かったことを大学に入ってもまだ自慢する人、

有名な高校出身であることを自慢する人、

入試の点数開示や過去の模試の成績を自慢する人。

そうやって、自分が人よりも優秀であると主張したがる人が多かった。

医学部に入って医者になることを鼻にかけている人もいた。

私の友人はそういう人ではなかったのは幸いだが。

学年の中でもだんだん自慢せずとも誰が成績が良くて、

誰が留年すれすれなのかわかるようになり、

成績の良かった私に自慢してくる人はおらず、

私の目に見えるところでは嫌な光景はあまり目にしなくなった。

 

医学部というのはとても狭い世界で6年間もあるので、

立場が定まったら基本的には変わらず、

私は、主流からは外れているが、害悪でもない、勉強はできる人、

という立場でのんびり過ごしていた。

ヒエラルキーで言ったら最底辺なのかもしれないが、

 そもそもヒエラルキーに属していないような気持ちであった)

この頃の私は忘れていたが、元来医学部に来るような人たちは

自分にある程度の自信があり、プライドがあり、

人より自分は優れているという自負がある人たちなのだ。

 

また、一般的には医学部の学生は私も含めて

勉強はできたかもしれないが、それ以外のことはほとんどしたことのない

世間知らずの坊ちゃん嬢ちゃんで、実家も経済的に恵まれており

公立/国立大学であっても、自分でバイトして学費を工面している人や

奨学金がなければ学校に通えない人はほとんどいないか、いても数人である。

(東大の入学生の親の世帯収入が高いというのと構造は同様である。)

 

こんな人たちが医者になったらどうなるか。

気をつけていないと勘違い医者になるのは簡単だ。

基本的には医者は他職種や患者さんから先生と呼ばれ、理不尽なことを言われることは少ない

一部の医者は、自分は偉いと勘違いし、自分が何よりも優先されるべきだと勘違いする

自分の思うようにことが進まないと怒鳴り散らす。

他の職種に対する敬意や配慮が足らず、コメディカルには偉そうにするし、

医者間では年齢と学年、肩書が何よりも大事で、

自分より立場が上の医者にはペコペコして、後輩のことは奴隷のように扱う

こんなパワハラモラハラの権化みたいな医者は程度の差はあれそこらじゅうにいる。

 

考えてみれば、大学入学時点でこうなることは予想できていたし、

18歳の時に、仲良くなれなさそうだと思った種類の人たちと、

25を超えたら仲良くなれるかと言ったらそんなことはない。

むしろ、25歳くらいから70歳くらいのクセの強い医者がゴロゴロいるわけで、

人間関係が厄介になることは必然かもしれない。

 

めんどくさい医者とやりとりしなければならない時、

なんでこんなことに精神を削られなければいけないのだろうかと思う。

それに、これ以上長くこの世界にいたら自分もそのうちそちら側の人間になってしまう

のではないかと感じることもある。

 

私はただ、平和に過ごしたいだけなのだ。早くこの世界から逃げたい。