優等生の呪縛

私はもともととても心配性で、優等生気質だった。

試験前になると試験に落ちるのではないかと不安で不安で仕方なくて、

特に医学部においてはすべての科目が必修で一つでも単位を落とすと留年するので

とても真面目に勉強した。

勉強のモチベーションは学問的な興味というよりは留年に対する恐怖である。

結果的に大学を次席で卒業したが、

自分のことを頭がいいと思ったことは一度もないし、

大学の成績がいいことと、医師として優秀であることは全く関係がないと思う。

しかし、実際、医者の世界は狭いので、

医局にも他科の医者にも在学中の成績が知られており、

勝手に優秀だと期待されて困っている。

(一方でそのことを全く知らない医者には若くて女だというだけでとても理不尽な対応をされることもあるので、自分にとってはメリットとデメリットと両方あるとも言える)

 

私が、在学中の成績と頭の良し悪しが関係ないと言うのには理由がある。

医学部の試験はほとんど全てが暗記力で乗り切れる。というか、暗記力しか問われていない。

難しい理論はほとんど存在しない。試験においては。

過去の偉大な研究者たちが見つけた功績をただただ頭に突っ込み、知識として蓄えるだけだ。

医学の発展に貢献してきた偉大な研究者の皆様は素晴らしいが、

それを覚えて試験で答えているだけの私は何もすごくない。

試験のために分厚い教科書1冊分の知識を丸暗記するのは確かに大変なのだけれども、

覚えているだけ、知っているだけなので、ただそれだけだ。

あえて言うなら、医学部の試験の成績の良し悪しは、

膨大な知識量を試験日という期日までに知識をどれだけ詰め込んでこられるか、という

自己管理能力を測ることはできるかもしれないが、それ以上のことは問えない。

 

実際の臨床で知識は役に立ちはするけれども、

必要な知識は別に学生の時に覚えていなくても働き始めてから嫌でも覚えるし、

臨床能力と記憶力は比例しないだろう。

研究や学術活動なんてもっと関係ないだろう。

 

なのに、大学の成績がいいだけで優秀な人だと勘違いされるのは少し困るし、

それだけで優秀なんだろうと人を評価するような人は人を見る目があまりないのではないかとも思う。

もっと医師として評価するべきところはたくさんある。